《女性外来・性差医療・漢方》   第23回和漢医薬学会大会より

1. 性差を考慮した医療とは:

@男女比が、圧倒的にどちらかの性に傾いている病態、

A発症率はほぼ同じでも、男女間で臨床的に差(症状・データなどに差)を見る疾患、

Bいまだ生理的、生物学的解明が男性または女性において遅れている病態、

C社会的な男女の地位と健康の関連などに関する研究を進める、

性差医療はこのような研究の結果を、疾病の診断・治療・予防へ反映することを目的とした医療改革である。

性差医療の概念は、1990年代、米国における女性の医療の見直しから始まりました。それまで、多くの臨床試験が女性を除外し、男性をモデルとして計画されたにもかかわらず、その研究結果が女性に当てはめられてきました。しかし、この10数年の欧米における性差医療・医学研究は、疾病の発症・診断・治療における性差を次々と明らかにしてきました。

2. 女性外来

天野恵子医師(東大医学部出身、循環器専門医)は1999年、この概念を日本に紹介し、日本における性差医療の実践の場として“女性外来”を立ち上げた。女性外来は多くの女性のニーズを反映して、瞬く間に全国に広がりました。

統計では、女性外来受診者の年齢は4060歳が7割を占める。疾患の割合は、更年期症候群、精神的疾患、身体的疾患がほぼ4分の1ずつ、そのほかには婦人科疾患、不定愁訴、セカンドオピニオンが続きます。治療は“傾聴”から始まり、疾患や病態についての丁寧な説明、カウンセリング、生活指導、栄養・運動指導が主体であり、薬物療法としては漢方薬が最も多く処方されています。

3.漢方治療

女性外来の現場では、漢方薬が、西洋薬に反応しなかった多くの病態を改善しており、患者と担当医師に大きな驚きをもたらしています。全国的な女性外来の普及により、これまで西洋医学で問題視されてこなかった病態に対して漢方治療が大きな福音をもたらす可能性があります。